みなさま、
お久しぶりです。
新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、おんころカフェはしばらく中止となりましたが、 中岡代表理事から「おんころのたね」のオンライン版 #1 (ビデオとスクリプト)お楽しみください!
哲学相談おんころの中岡です。がんや難病の患者さん、家族の方と哲学対話をしています。
昔も今も、ひとはさまざまな災難に遭います。どんなに「安心安全」と言われる社会でも、危険をいっさい取り除くことはできません。
1.良寛は被災者をなんと見舞ったか
江戸時代、いまの新潟県に良寛というお坊さんがいました。ある時大地震が起こり、5千人余りの人が亡くなった。良寛の知人にも被害に遭い、子どもに死なれた人がいた。
その人への見舞いの手紙が残っている
良寛「災難に逢う時節には災難に逢うがよく候…死ぬる時節には死ぬがよく候…是はこれ災難をのがるゝ妙法にて候」。
災難にあうときは、災難にあうのがよい。死ぬときは、死ぬのがよい。これこそが災難を逃れる名案だ。こんなふうに言い直せる。
これはすごい逆説です。災難にあった人にはかわいそう、気の毒だと「共感」してあげるのが、ふつうの感覚ですが、良寛はそれをひっくり返して、「そのままでいい」と言っている。
2.フレーム――物事を考えるわくぐみ
物事を考えるときの枠組みを、英語でフレームといいます。社会の一員として成長するとき、私たちは「常識」を身につけていきます。
常識はもちろん望ましいものなのですが、この社会でながく生きているあいだに、私たちのものの見方は硬直してしまうことがあります。成功体験という言葉も聞きますね。「このやり方でうまくいった」と思うと、それをずっと守り続けたくなります。
自分を見る見方、周りの人々との距離の取り方については、どうでしょう。ストレスの少ない、自分の楽な生き方を築いてきたつもりでも、そのパターンを守ることそのものが重荷になっていることがあります。ときには、自分を変える努力が必要なのかもしれません。私の年老いた母は、衣類でも食器でもほとんど捨てないで取っておくタイプ(「もったいない」)ですが、このごろは「断捨離」という言葉を覚えて、少しずつ処分しています。なじんだものを、あえて自分から突き放し、整理しています。
3.フレームを変える
私たちは安心とか危険とか、わかりきったように口にしますが、生きるおおもとの感覚(フレーム)をときには変えてみることも必要なのでしょう。良寛さんほど大胆な見方の転換はむずかしいかもわかりませんが、このこと、「フレームを変える」ということを意識してみてください。
おんころカフェ進行役 中岡成文