小川糸さんの『ライオンのおやつ』は大切な一冊になった。
レモン島にあるライオンの家というホスピスが舞台。主人公は33歳で余命宣告を受けた海野雫(しーちゃん)。瀬戸内の空と海・風・匂いを堪能できる環境、心と身体を温めてくれる美味しい食べ物、思いやり溢れる素晴らしいホスピタリティ。ライオンの家は、私が大好きなものを集めたような理想のホスピスである。終末期をこんな所で過ごしたいと思う人は少なくないと思う。
ある意味理想的すぎて夢のような物語だ。読みながら涙はたくさん流れたけれど、読後感は不思議なほど爽やかで、希望が残り、静かに力が湧いてきた。
しーちゃんの心情の移り変わりが、私のこと?!というほど思い当たることばかりだった。彼女が、怒りと悲しみと絶望の淵から、たくさんの気づきを経て自分を取り戻していく過程がとてもリアルで、自分の心も一緒に回復していくようだった。
・「今日という日を、すこやかにお過ごしくださいね」生きている。私、まだちゃんと生きている。
・必死になって夜空を探せば、私を見てくれている星がきっとある。
・こんな荒廃した心のまま、人生を終えてはいけないと思った。
・そこにいるのは、確かに私だった。病気になる前の元気な頃の私でも、病気になった後の私でもなく、その両方の私の笑顔だった。だからすごくすごく自分だと感じた。
・だって、私はまだ死んでいないもの。命が燃え尽きるまではがんばらなくちゃ。
・私の目標は、じゃあね、と手を振りながら、明るく死ぬことだ。朗らかに元気よく、笑顔でこの世界から旅立つことだ。
・死を受け入れる、ということは、自分が死にたくない、という感情も含めて正直に認めることだった。
・すべては、私の人生の結果。生きてきた時間の結晶が、今だ。だから、私が私の人生を祝福しなくて、誰が祝福するの?
・もう、元気な頃の体には、戻れない。でも元気な頃の心は取り戻せた。そのことが今、すごく誇らしい。感謝の気持ちが、私の中で春の嵐のように吹き荒れていた。
・人は死の直前まで、変わるチャンスがある。
心に残るフレーズが多くあった。私はまだ悟れてはいない。これから何が起こるかわからないし、その都度迷って悩んで、落ち込んだり投げやりになったりもすると思う。ただ、それまで生きてきた時間が私なりの結晶となっていること、その結晶は壊れたり壊されたりしないこと、私を見守ってくれる星があることは忘れないでいたい。そして最期はにっこりと、しーちゃんのように「ごちそうさま」と感謝して終われたらと願う。
幼馴染が短い闘病の後に亡くなって明日で2年。思い出は今も私の中にある。同じ気持ちであろう友人たちと彼の話をしようと思う。
ショコラより