おんころ Café

私にとっておんころカフェ#2

 私が「おんころカフェ」に出会ったのは、治療を継続する中での副作用や漠然とした不安の中、ネットで同じ症状について検索ばかりしているときでした。緩和する方法を検索すると「このようにすれば・・・」という、それがあたかも正解のような導きばかり。病になる前から実践したことも多々あり、状況下への不安は拭い去るどころか不透明な膜が重ねられていくばかりでした。それは、臨床の病とは別のわだかまりの塊になっていきました。以前より抱えている問題と複雑に絡み合いどんどん大きくなっていました。

 同じ病でも、診療・治療により改善されていく病状とわだかまりが必ずしも比例して落ち着いてくるものではありません。バックボーンそのものが、そのひとの在る今なのですから、そこらできたわだかまりの塊は臨床医に治療法を求めても応えてもらえるものだとも思えません。また1つの応えをいただいたとしても、そのわだかまりの質がどういうものなのか自分でわかってなければ功を奏しません。自分のことを自分で理解しようとする作業はとても難題です。今までの自分と対峙しなくてはいけません。根本的な問題は、対峙するエネルギーが湧いてこないのです。そのような無常を感じる中で「おんころカフェ」の記事を見つけました。記事には、<困難をかかえる人々が語り合い、理解や内省を深めること、それを通じて問題解決への手がかりを見いだすことを支援しています。>とありました。<考えてみる>という行為は正面切っての対峙という方法でなく、あらゆる方向から、ときには鳥瞰図から思いがけない景色を見つけ出す可能性が出てきます。好奇心とも相まって<考えてみる>という世界がすっくと目の前に現れてきました。

 はじめての参加の際は、緊張と患者としてのポジションで話をしなくてはという気持ちで、その回のテーマについては語り合い理解を深めることはできていなかったと思います。けれど終わったあとは、そのことに思いを巡らし、「ああ・・ああいえばよかったかなぁ・・・」という気持ちは湧いてこず「なんと良い時間を漂えたのだろう」という気持ちでいっぱいでした。気持ちの中にぽたりと筆からやわらかな色が落ち、まわりの色と交わりながら広がっていきました。次の回からは、テーマからあらためて今まで考えてみたことのなかった方向へも広げて考えていくことが面白く、この時間がとても大切なものとなってきました。会が終わったあとは、ちょっとこんな考えかたもあったかな〜と思い巡らすことはたまにあるのですが、日を重ねたころにはそこへの思いも淡いものになっています。けれど会に参加するごとに、こぼれ落ちてくる色のしずくは、時間とともに広がり薄らぎ溶け込み、確実に淡くとも彩られてきていきました。それは気力へとつながってきています。そしてわだかまりの塊も含めたバックボーンへも色が染み渡り、大切なものとして蘇ってきました。同時に、他のことへもやわらかく捉えられるようになりました。やわらかくとは、うまくいく方向性だけを求めるのではなく、うまくいかないことも好転する方向だけに考えるのではなく、ゆるやかに受け止め、その状況も吸収して自分のものとして考えていけたらという方向へいけるということです。

 病は、そのひとに起こった環境変化のひとつです。しかし、それは予期せず、自分だけではどうやっても逃げることのできない現実です。患者となった方の中には、ご家族や職場へも病気のことについて話をしない方もたくさんいらっしゃいます。話をしたところでそのひとのことを受け止め、その方の思い描く対応をしてくれるというのはドラマのようなことだと受け止めているからです。思いが崩れ、大きなわだかまりとなり別の病を引き起こすだろうということも想定されます。

 これから「おんころカフェ」のようなボジションが、1つの専門分野として確率していくことを望んでいます。診療、治療を専門とされるところ、また患者の会のような患者の方が現状の病状について同じ体験者として支え互助するところ、緩和ケアのような病状に寄り添った医療の専門からも検討しQOLを考えるところと在ります。どれも必要です。そして共通する関わりは患者という位置づけです。けれど私たちは生命のある中でその限りを生きている<ひと>なのです。「おんころカフェ」は、今在る自分を開放できる場としてとても重要な場所です。その場があること、その場を知り体験していることで、その場にいないひとへの関わりも変わっていけるものだとも思っています。生きていることはそのひとなりを受け止めていくことでもあると思います。特に、病という大きな課題を背負ったときには、臨床とともに、臨床についても理解さている方々も混ざりフラットな関係性での中で話ができる場の両輪が必要だと思います。そこを「おんころカフェ」のような場が担ってるのだと思います。

                                  K.