おんころのたね・その5「不連続な生き方」

(2018/1/27の「おんころカフェ」より)

1.人生の「理由」
福祉系のNPOでボランティアをやっています。そこの理事長がぼやいていました。NPOを始めた理由を尋ねられて、困るのだそうです。大学では福祉系の学部に行った。卒業後、福祉施設の職員になった。だから、独立して福祉系のNPOを起こした。――そういうと、「なるほど」と言ってもらえる。だけど、自分ではその説明に納得していない。そんなに一直線の人生と思っていないのです。

私のキャリアも、他の人の目からは、哲学ひとすじに見えるかもしれません。けれど、父親に逆らって哲学を選んだわりに、卒業を前に進路変更を真剣に考慮しました。何とか哲学の研究者として大学に勤めることができ、親を安心させたのはいいが、そのうち「臨床哲学」という風変わりなものを立ち上げました。なぜ? 説明のしようがありません。

2.「点」を後からつなぎ合わせる
アップル社の創業者スティーブ・ジョブズが、「いつでもハングリーでいなさい。いつでもバカでいなさい」(Stay Hungry. Stay Foolish.)と締めくくった有名な卒業式スピーチがあります。生まれてすぐ養子に出される。大学を中退する。25歳で億万長者になる。そして膵がんの告知を受ける。人生にはいろんな山や谷があります。その一つひとつの「点」を「つなぎ合わせる」ことで、その人らしい物語ができる。ただし、とジョブズは言います。「将来はこうなると見通しをつけながら、点と点をつなぎ合わせるわけにはいきません」。私たちにできるのは、後から、あくまでも後から、それまでの点をつなぎ合わせて、精いっぱい自分の物語をつくり上げることだけです。

3.生まれたついでに生きる
そこで思い浮かんだのは、小学校のときの担任の四角い浅黒い顔です。その男の先生は、私たち6年生を相手に演説を始め、人間は「生まれたついでに生きている」だけだと、言い放ったのです。何と投げやりな人生観だ! 希望あふれる子どもに聞かせる話か? そう憤慨したものですが、考えてみると「理由」が先にあって生きているわけではない、そう言いたかったのかもしれません。それならわかります。ふてぶてしいようで(先生ごめんなさい!)、懸命な生涯だったのでしょう。

4.ふたたびジョブズ
膵がん告知を受けた1年後に、ジョブズは上述のスタンフォード大学でのスピーチを行っています。大きな決断を迫られたときは「今日が人生の最後の一日だ」と想像してみなさい。彼はそう勧めています。他人の思惑も、バカにされることも、失敗も怖くない──すぐに死ぬのだと思えば。ほんとうに大切なこと、人生の本質が見えてくる。成功と失敗、光と影のコントラストに満ちた人生を堂々と歩み切った人物らしい、シンプルで力強い言葉でした。

おんころカフェ進行役 中岡 成文


「おんころのたね」とは?
おんころカフェでは進行役の中岡が、対話を始めるまえに、みなさんの発想の「たね」になりそうなことを、少しご紹介させていただいています(その日の対話のテーマとは、直接の関係はありません)。

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