おんころのたね・その3「生きることのマネジメント」

(2017/12/2の「おんころカフェ」より)

 

1.母の自立
母は一人住まいの時期が長くありました。お風呂に入るとき、転ばないように細心の注意を払います。周りがよかれと思って、介助の器具をいろいろと勧めます。なかなか母のおメガネにはかないません。あれもだめ、これもだめ…。

なじみのない器具の性能を頭で理解するのに、まず時間をかけます。次に使い勝手を確認したがります。自分の手足に、肌になじむかどうか。それがあることで、かえって浴室内の動作を妨げられないか。一つ一つチェックします。そのプロセスに付き合うこちらも、忍耐が要ります。

自分の納得だけでなく、周りの顔を立てることにも、気を遣います。風呂に木の台を置いたらと私たちが提案したところ、じっくりと検討し、ついに決断しました。大工さんに発注してくれと言ったのです。今ではヒノキのぬくもりを愛用しています。

2.マネジメント――折り合いをつける
マネジ(manage)という英語を思い出しました。管理すること? いえ、本来は「かつがつできる」ことを意味したようです。「かつかつ」ともいいます。自分の体力のなさ、記憶力の減退、つまり「できなさ」を見切って、生き抜いていくことです。

自分を支え、見守ってくれる人たちとの関係性も、大切な資源です。人間がほんとうに自分だけでできることは、ないに等しいのですから。ただし、自分の領域に踏み込まれ過ぎたら、自立という生存の本義に反します。

環境(周りの人やもの)を生かし、自分を生かす。これこそ、エコロジーなのでしょう。

3.予想外の効果――反発力
私は、母が協力してくれたと喜びました。それで「二匹目のどじょう」を狙ったのですが、みごとに当てが外れました。

歩く力が弱まったので、介護保険を使ってリハビリに行ったらといいと勧めると、こんどは反発したのです。最初はしぶしぶ話を聞いていましたが、途中から動かなくなったのです。自分の体は自分でわかっていると言いたいようです。

反発力・ねばりが出てくる。それはそれで、よかったと思います。周囲に頼るのか、自分主導でやるのか、どっちやねんと言いたくなる面はありますが、人間の心にはさまざまな思いや都合がうずまいて当たり前です。矛盾しているというか、「一人多元主義」「一人マルチ」なんですよね。

4.生きることへの声かけ
英語では、困っている旅行者には、「お手伝いしましょうか」(Can I help you?)と声をかけます。けれども、仕事場で同僚や部下に対しては、少し距離をおいて、「大丈夫?できる(マネジ)?」(Do you manage?)というそうです。仕事の上では、みんな一人前のはずですから、安易に手を貸すのはよくないのでしょう。

それでは、生きることについては? 他の人のくらしや生き方は、どのように尊重し、どのように援助すべきでしょうか。あなたはどんな声かけをしますか?

おんころカフェ進行役 中岡 成文


●「おんころのたね」とは?
おんころカフェでは進行役の中岡が、対話を始めるまえに、みなさんの発想の「たね」になりそうなことを、少しご紹介させていただいています(その日の対話のテーマとは、直接の関係はありません)。

 

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